うっかり迎えてしまったグダグダとした夏の始まりに、水着を見て気持ちを整える。一番欲しいのはイタリアのベネチアを拠点にするスイムウェアブランド<Lido>。華奢な紐使いやヘルシーなカッティングが好みだ。そしてMatthieu Lavanchyが撮った、水泳とヴァカンスのいいとこどりをしたヴィジュアルがすごくいい。
ブランド名の“Lido”とは、ベネチアにあるリド島に由来する。昔からエリートが新鮮な空気と海水浴を楽しむために訪れていたリゾート地。そしてもう一つ、その島が語源とされるものがある。かつてイギリスで一大ブームとなった野外プールとしての“Lido(英国ではライドという)”だ。
厳密には単なる屋外プールとは違うようだが、使っている当の本人たちもその定義を明確にはわかっていない。1920〜30年には何百も作られ、今に至るまでに幾つも閉鎖した。
このことは『Liquid Assets』で知った。Malavan Media社のシリーズ本 “Played in Britain” (英国で歴史あるスポーツについてまとめた、国内の第一人者とされる人との共作)の一つで、ジャーナリストでスイマーのJanet Smithによるもの。
全ての人に開かれたLidoは職業も年齢も違う人々で賑わい、優雅に日光浴をしたり、体操教室に参加したりと各々が自由に過ごす。一切の仕事や日々のストレスを忘れていることだけは同じ。
朝は本格的なスイマーがゾーンに入って泳ぎ倒し、夕方のカフェではオーケストラが演奏をしたり、ダイバーが何度も場内を沸かしたり。暑い日は真夜中まで開いていた。
泳ぐ以外にも大いに楽しめて、ただ観客として足を運ぶ人も大勢。そう、ギルモア親子のように。
悲しいことに安全性や費用の問題で徐々に無邪気な遊びではなくなり激減・・・・・・。しかし、熱心な愛好家のおかげで残ったLidoはいくつかある。
三角形のJubieel Poolや、天然プールのCirencester Open Air、オリジナルグッズをせっせと作るParliament Hill Lidoなんかが今気になるし、3度の閉鎖を乗り越え絶賛改造中のSalt Dean Lidoと、1815年にできて以来一度は閉鎖したが、復活に向け奮闘中のCleveland Poolsを勝手に応援している。
時代を超えて愛されるLidoに恋焦がれ、今年もまた暑さにうんざりしてもなお夏に憧れてしまう。
Written by Minori Kitamura