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SOJU AND SOLMAY

Summer Drink, Summer Book

in BUSAN

7月中旬、海開きしていると聞いて喜び勇んで海水浴に来たのに、旅行中はずっと雨予報。ビーチでごろついて時々泳ぐ計画が崩れて悲しかったが、実際、釜山は雨が似合う街だった。歴史と港町特有の哀愁がそう感じさせるのかもしれないし、文化財を改装したカフェの窓から入る鈍い光や、濡れた砂浜からブルーグレーの海、空へと続く景色は目に入るたび綺麗だった。

太陽を浴びる代わりに、人けのないビアバーでのんびり雨宿りしたり、雲が去って月が出てくれた夜を逃さず缶ビールを買って、同じく束の間の清々しい浜辺を満喫する人たちと過ごした。波打ち際でtiktokを撮る女子たちや寄り添うカップルは、夏っぽくて嬉しい。

こう振り返るとビールばかり飲んでいたようだけれど、思い出のドリンクは釜山のソジュ(韓国の焼酎)<デソン>だ。海の街らしいロゴデザインに、AWWブルー。気に入った。

釜山の1食目、「トンヘムルフェ」で<デソン>に出会う。白身の刺身と千切りの野菜をコチュジャンや酢などのソースとよく混ぜて、エゴマの葉に乗せて、チヂミと共に巻いていただく。
こう。

ソジュがすすむ。

チャガルチ市場の横にあるホルモン焼きの店「ペックァヤンコプチャン」にて、アジュンマのエプロン、ボトル、グラス、のトリプル<デソン>。

昔はソジュのボトルは淡い青と黒だったそうだ。ある時<グリーン>という商品が緑の瓶で登場し、その後緑が流行したらしい。当時の政府はボトルが無駄になるのを懸念して各社が同じ物を使うように決め、今ではどの銘柄も回収されて、洗浄され、また新たなラベルをつけて使われている。<ジンロ>のボトルに<ハイト>のラベルをつけて生まれ変わっていることもあるそうだ。ということを、Netflix『ペク・ジョンウォンの呑んで、食べて、語って』で学習した。

フレッシュであることが一目瞭然、つやつやのホルモン。
締めのポックンパはどんなに満腹でも食べたかった。ホルモンの旨い油で炒められた焼き飯と、軽く炙られた海苔。
こう。

ソジュがすすむしかない。

海雲台の貝焼き店では<ジョウンデー>を飲んだ。<デソン>との味の違いは正直なところ記憶がないんだが、パンチの効いた釜山の料理にソジュが合うことは確かだ。
コンビニやスーパーなどに空き瓶を持っていくと100ウォンと交換してくれるらしい。
パンチとはつまり、新鮮な帆立にとろけるチーズを載せて溶かしたり、新鮮な海老とインスタントラーメンを煮込んだり、旨さへ躊躇ないことだ。素材そのままの良さをどうぞ、では全然ない。
とはいえ、優しめなスンドゥブ定食ランチであろうと、頼んでしまうのがソジュ。
海水浴するはずだった海雲台のビーチはどしゃ降り。

パク・ソルメの『未来散歩練習』は釜山が舞台の本だと教えてもらって、持ち歩いて読んだ。今のこの時間、この場所での思索や出会いが未来の練習だとしたら、反対に、未来の練習である今、という意識は、実際は目の前のことに精一杯だとしても、ふとした瞬間の判断の助けになるのかもしれない。“練習”という響きは謙虚で気さくなところもあって、いいな。

1982年の釜山で実際に起きた事件を軸にした、「私」とチェ・ミョンファン先生、スミとユンミ姉さんとジョンスンの5人をめぐる物語。「私」は現実で、脳内で、さまざまなおしゃべりをする。コーヒーを何杯も飲みながら。ドーナツをいくつも頬張りながら。五香醬肉ランチをシェアしながら。お隣さんからもらったカレトックに蜂蜜をつけながら。

本の中の「私」に影響されて、よく食べ、よく飲み、よく喋った。旅は散歩の延長だ。

泳いだ思い出の代わりに飲んだ思い出を持って帰る。ビーチ沿いの土産物屋で買ったソジュグラス 各4,500 KRW

Written by Saya Kawada (Town)