ホリデーシーズン目前。失われた2020年にこそ、煌めきと実体が欲しい。ダイヤが欲しい。
いつかこの腕に来るのか、それとも来ない人生なのか、常に気を揉んでいるのがラインブレスレット、いわゆる「テニスブレスレット」だ。まだ世界がコロナと無縁の1978年初秋、全米オープンでクリス・エヴァートがダイヤとゴールドのシンプルなブレスを身につけてプレーしていたところパーツを落としてしまい、探すために試合を中断したことからその名が広まったという。80年代の<De Beers>社の広告のテニスに掛けた美しいコピーとビジュアルは今見ても胸を打つ。
でも正直、この年の全米で目が釘付けになるのは彼女のフリルワンピの胸元で光っていた「Babe」ネックレスのほう。
ブレス落とし事件も物ともせず結局4年連続の全米チャンピオンとなったクリッシーの指には、やはり大きなダイヤのリングが輝いている。そもそも自分のアクセサリーを探すために試合中断させるくらいのハートがないとトロフィーもダイヤも手に入らないし似合わない。1978年から女王の笑顔がそう教えてくれる。
Written by Saya Kawada