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TROCADERO

Autumn Drink

in Stockholm

いつもと違う形、と言ってもパッと見には「いつも」と大して違いのないグラスを作った。新しい形のグラスを作ったときには普段自分では飲まないけど、きっと他の誰かが選ぶであろう飲み物を試してそのグラスの飲み心地を確認する。

今回は、スウェーデンに住んで24年が過ぎたにもかかわらず、1滴たりとも飲まずに過ごしている<Trocadero>(トルカデーロ)を試すことにした。

<Trocadero>は、1953年からスウェーデンの「Saturnus」社で生産されている国民的飲み物で、どこのスーパーにも置いてあるし、レストランでもよく見かける。
この160ml〜180mlほど入るグラスを作るときイメージしたのは、ワインのチェイサーとしての水だった。制作中、アシスタントにキルン(徐冷機)のドアにチョークで何個制作したかがわかるように、記入してもらう。日本では正の字で数えるが、スウェーデン(北欧)では縦に4本、5本目をその4本を横に切るように書く。5本でひとまとまりになっているので、遠くからでも何個作ったのかが分かりやすい。

<Trocadero>は頭が痛くなりそうなほど甘い。甘い炭酸飲料水にはステムグラスの方が合うと思い、シードルグラスからインスピレーションを得て小さめに制作したステムグラスで飲み直してみる。
一口飲んでみたけど、唇に甘さがまとわりついてキレが悪いので、喉の奥までスッキリ届く直線が生きたグラスに変える。少量がいいと思い、もっと小ぶりにしてみる。

ちなみに、この3種類、全く同じに見えるが、味が微妙に違う。左から、「オリジナル」、「ラズベリー風」、「シュガーZERO」。

飲み終わった缶は洗って、リサイクルに回す。サイズによって価値は変わるけど、バーコードの脇に「PANT 1KR」とか「PANT 2KR」と書いてあって、その分のお金が戻ってくる。この行為を「パンタする」言うのだけど、どこのスーパーも一角にパンタできる場所があって、そこにある機械で缶と瓶に分別してくれる。そして、そこのスーパーで使える金券(バーコードのついたレシート)が出てくるので、それをお金の代わりに会計のときに使うこともできるし、そのままレジで現金に変えてもらうこともできる。

このパンタシステムは<Trocadero>に限った話ではないけど、街に落ちている缶や瓶を誰かが集めてパンタしているようで、街には空き缶や空き瓶が落ちていることがほとんどない。

味は想像通りだったけど、新しく作ったグラスが<Trocadero>には合わないと分かっただけでもよかったとする。

Written & Photographed by Yoko Andersson Yamano / Craft-based glass-artist, Tableware designer