ある日することがなくて部屋でぼーっとしていたら、いつもなんとも思わない殺風景な壁に向かって、テニスの壁打ちができるのではないかとふと思いついた。適当なジュニア用スポンジボールをamazonで購入し、さっそくやってみる。ワンバウンドさせる広さはないのでノーバンのボレースタイル。これがなかなかいい塩梅で、外出ができない期間の気分転換になった。音楽に合わせて膝や体幹を意識すると軽いエクササイズにもなり、ドレイクなんかを流しながら壁打ちした日には気分はさながらナオミオオサカ。実際のナオミは、SNSでゴージャスな自宅でボーイフレンドとの他愛ないじゃれ合いやキュートなダンスをアップしていて微笑ましかった。が、正直、トレーニングしなくて大丈夫か。心配にもなる。ツアーも中断され、アスリートの皆さんも集中力やルーティンをキープするのも大変だろう。みんなそれぞれ先が見通せない不安を感じているに違いないのに、スター選手たちはあの手この手でステイホームのファンたちを楽しませてくれた。特にラファエルナダルのインスタライブは、ロジャーフェデラー、続いてアンディマレー、最後に同郷のマルクロペスと、ラファが仲良しの選手とそれぞれ通話する様子をただひたすら流すというひねりのなさで、日本時間としてはたしか早朝のタイミングだったが、ベッドの中から無理なく目だけで楽しめた。豪華なズーム飲み会(実際は飲んでなくてトークしてるだけだけど)を立て続けに覗き見させてもらっているようだった。世界各地で過ごすアスリートがこういう形で繋がって、ライブで届ける2020年はすごい。現時点では、7月末までツアーの中止が発表されていて、選手たちのストレスも相当なものだろうけれども、どうか耐えて、またコートの上に帰ってきて素晴らしいプレイで魅了してほしい。いちテニスファンとして願いながら、今は東京の片隅で、壁VS私のボレーボレーを続けている。
Text by Saya Kawada (Town)