山葡萄の籠
数年前、山形の置賜紬を見せてもらいに訪ねた野々花染工房にて、草木染めの美しい反物に溜息をつきながら、かたわらで職人さんが編み込んでいるのを見せてもらった山葡萄の籠。今年の葡萄のツルはなかなか良かった、来年がどうかはわからない、同じものは二度とないんだ、と工房の諏訪さんは言った。
諏訪さんの私物の籠は飴色に深まって、葡萄の色に近づいているように見えた。長年使い込むと手の油でこうなるのだよ、と聞く。
山葡萄の籠はずっと前から憧れていたし、よい機会だからと、オーダーメイドで作っていただくことにした。細かい編み目にしたら着物にも洋服にも合わせやすそう(だけど難しいから細かく編める職人さんは少ないらしい)、大きすぎるのは嫌だけど財布に筆箱にポーチ、A4半分に折ったものくらいは入れたいよな、などと思い浮かべ仕様のリクエストをしてから半年あまりたって、私だけの籠が届いた。
職人さんが一人で編み上げてくれた、手の力の証の籠。
先輩の誕生日のために用意したワインボトルもうまく入っている。撫でて、撫でて、この手の油しみこめ、と愛でる日々。
Written & Photographed by Yuriko E