梅雨の時期になると、淡い色の服が着たくなる。雨の風景に溶け込むような色がいい。肌に貼り付かない素材だと、体感湿度が下がる感じがしてますます心地良い。と思っていたら、90歳を超える叔母から、あじさい色のブラウスをもらった。青みがかった緑と、葉っぱのような黄緑、紫寄りのピンクが、まさにあじさいを水彩で描いたようだ。薄手のさらさらしたコットンでできているので、素材も◎。ドレープもバルーン袖もたっぷりしていて、肌にまとわりつかず良い。たぶん、カネボウがライセンスを持っていた時代の日本製ディオール。本国のヴィンテージには程遠いかもしれないが、つくりはちゃんとしてるし、「すてきなブラウス」って感じがして気に入っている。
今の時期はと書いたが、私はいつも淡い色が好きだ。ペールグリーン、ペールブルー、ライラック、クリームイエロー。とくに、うぐいす色、ミントグリーン、ライラックが好きで、気づくと手に取っている。たぶん自分にははっきりした色の方が似合うから、純粋に色として好きなんだと思う。昔、ソウルの免税店でペールグリーンの<フェラガモ>のバレエシューズを見つけたときは、お財布と相談せずに即買いしてしまったし、宅トレのお供、<SET ACTIVE>のブラとレギンスはライラックでそろえた。ミント色のカットソーやブラウスも数枚持っている。<サーティワン>のアイスは、なんといってもポッピングシャワー。
よくよく考えると、いろいろなモノやコトについても、「あわい」のものに共感する自分がいる。儚い印象で、ぼんやりとした、どちらともつかない感じ。夜明け、夕暮れ、季節の合間、何かを区別する境界線だって、寄れば寄るほど、そこにはうっすらとしたグラデーションが広がるだけ。割り切れない数字のように、何かをはっきりと分けることなどできないと、(ポジティブに)思う。
東京も遅ればせながら梅雨に入った。街のあちこちは、あじさいでもういっぱいだ。和菓子屋さんにも、「紫陽花」という名の生菓子が並ぶ。小さな花(ほんとは「がく」らしい)が集まって丸い形をつくるこれは、色も形も「あわい」をよく表していると思う。印象派風のタッチであじさい色に染められたブラウスを着て、この梅雨時を過ごしたい。
Written & Photographed by Satoko Shibahara / Editor, Writer