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A BOOK OF AHIRUSTORE

アヒルストア」を切り盛りする齊藤さんご兄妹のお母さまであり、ご自身もアヒルのスタッフの一員である齊藤光代さんが、お店の日々の様子を墨の絵と文章で綴った絵日記が一冊の本になった。この本を読んでいると、「アヒルストア」のことがよく分かる。初めてのお客様が多い日は店内が静かなんだな、とか、いつも私たちにおいしいおいしいワインをサーヴしてくださる方が健康君というお名前であることや、土曜の賄いはテルさん(齊藤長兄さん)作のパスタにワイン1杯がつくらしい、大好物のあのスープ・ド・ポアソンがハルさん(齊藤次兄さん)のお得意料理だったのか…などなど。

中でも印象的だったのは、ワカさん(齊藤末妹さん)のパンのこと。“和歌さんの焼くパンは、おそらく率直な味わいだと思う” “毎日、繰り返すこと。「あったかい、美味しい」という言葉を待っている” ー 光代さんの視点でこんな風に描かれているワカさんのパン作りが、なんだかそのまま「アヒルストア」を表しているようだ。よく思うのだが、アヒルに限らず、わたしがお世話になる飲食店の方々は、毎日店を開けて、毎日同じ料理を作って、「おいしい!」と客を喜ばせている。どんな客が来るのか、あるいは来ないのかわからなくても、毎日。黙々とルーチンを繰り返し、試合に出れば必ず勝利するアスリートのような、ローラン・ギャロスにおけるラファエル・ナダルのようなカッコよさ。それに加えて、というかそれなのに、というか、アヒルは、まるでお天気みたいに、みんなに平等にそこにある、という感じが好きだ。運がよければすぐ入れるし、ちょっと並んで待つ日もある。夏はしっかり休む(今年は10/25-11/16の秋休みなので要注意)。オープンで、シンプルで、誠実だ。美しいからし色のカバーを開くと、そんな「アヒルストア」の素敵さが、かつて書道教室を主宰されていたという光代さんの筆からほわっと立ち昇ってくる。

素敵すぎてついつい飲み過ぎてしまうことだけが悩ましい。

「アヒルストア」のほか、以下のお店でも購入できるそうです。

Less HIGASHIKAWA(北海道東川町)
BOOKNERD(盛岡)
パーラー江古田(江古田)
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(神山町)
Organ(西荻窪)
La Cachette(浜松)
KIJIRUSHI(京都)
wineshop TAI(徳島)
OWL(鹿児島天文館)

Photographed by Seishi Shirakawa
Written by Saya Kawada