2年前の秋、<ミュウミュウ>で人生初めての買い物をした。
23AWのショーを見たときに脳裏に焼き付いてから半年ぼんやりと夢に見て、次期のショーで同じ型の新たな姿が気持ちを後押しをした。正確には22SSシーズンにも出ていた形とおそらく同じではあったのだが、スタイリングとはすごい力を持っている。
ただ好きだというだけではあまりに手の届かない存在で、先輩や友人にたくさん相談もした。
ある人はラグジュアリーな買い物はパリ出張のたびに一つずつ記念にと言って、ある人は雑誌の企画でモデルへ着せた<ミュウミュウ>を自分のためにも買ったと言って、ある人はいつかいつかと思っているうちに歳を重ねた自分には気後れするほどキュートに感じたと言って、一方で、アンジェラ・ヒルのクローゼットの大半が<ミュウミュウ>だということも知って。
いろんな人の買った話、買わなかった話を参考にしながらずっと迷っていると、「そんなに心に残るバッグがあるなんてこと、なかなかないから逃さず買えば」と言われ、それもそうだと思い立ちあっさり表参道店に入った。
同じ世界の話か、しばらく煩う間にも憧れのバッグは飛ぶように売れていたようで、黒は残り一点という。いよいよ逃せないと思いつつ、いざとなると途端に怖気付いて一度店を後にし、歳の近い頼れる先輩を1時間かかる店まではるばる呼び寄せ、見守られながらついに購入した。
ひとつの買い物にしては質量のある思い出だけど、使い勝手のいい様子に惚れたこともあり神経質になりすぎないことは重要だと思っている。13インチのiPadやA4の書類やポーチなど、たくさんものを入れているところへ最近仲間入りしたのが、このいい佇まいの水筒、というか、市販水のパッケージボトル。アムステルダム拠点でプラントベースのボトルで水を販売する<bottle up>というブランドだ。
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そして日本から姿を消してしまいそうなラッコ(のマスコット)。
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1月4日に、福岡県のマリンワールド海の中道にいたリロが旅立ってしまい、日本に残るは2頭のみ。なかなか足を運べない鳥羽水族館(三重県)のメイとキラを応援するつもりでぶら下げている。
ブームピーク時の1994年は日本の水族館にラッコが総勢122頭もいた。保護強化のために1998年にアメリカが輸出をやめてから減り続け、ついにはメス2頭しか残らず、繁殖不可能な状態になってしまったそうだ。そしてメイは20歳、キラは16歳で寿命も近いとされる。
携帯電話を取り出すと、大半の人が反応してくれるので、今ラッコがどんな状況にいるかを熱弁する日々だ。
乱獲や環境汚染で激減したことで大好物のウニが増加し、巡り巡って海中林の生物群集に大きな影響を及ぼした。ラッコは生態系において比較的個体数が少ないにも関わらず、大きな影響を及ぼすバランサー“キーストーン種”という面でも重要な存在なのだが、今では絶滅危惧種として認定されている(2023年夏、科博での特別展「海」より)。
最近では北海道で姿が見られるようになったといううれしい話もある。生息地として安定した場合、ウニ漁との軋轢も深刻ではあるが、彼らの明るい未来を祈るばかりだ。
随分と話がふくらんでしまったが、わたしの<ミュウミュウ>は、いろいろ詰まって重たいのである。
Written & Photographed by Minori Kitamura