2001年、冬の始まりは早かった。10月初め、まだ夕方だというのに空は暗く空気がキーンと冷えていた。ふんわりとスローモーションのように雪の結晶が重なり合って空から降ってきて、私の少し前を歩く友人の肩にとまった。スウェーデンで見た雪が初めてだったことや、なぜか雪が降るとテンションが上がる習性もあり、友人に向かって「雪だよ!」とうれしさを爆発させた。振り返って私を見たその時の友人の冷め切った青い目を思い出すたびに未だに笑ってしまう。
森の針葉樹に積もる雪はとてもしっくりきていて美しかった。祖父の盆栽に積もる雪とはまた違って、針葉樹の深い緑をよりいっそう黒く見せた。
私の住む村から街へ1日2本バスが出ていた。1本だったかも。45分程で街に着く間、代わり映えのない針葉樹の森の中をひた走る。森の中には3年間住んだけれど、雪が積もって窓の景色がモノクロの世界になるのがいつだって好きだった。バスからの景色は、自家用車から見える景色と違ってちょっとだけ目線が上がって一面の森を見渡せるような感覚がある。
ある時、地元の友人と街に出かけた。バスは乗客が少ないので好きな席を選べる。私は外の景色がよく見えるようにバスの右の窓側の席に座った。その森で生まれ育った友人は、外の景色など気にもとめず、左側の席を2つ陣取って窓を背もたれに足を伸ばし、バスが走り出す前に睡眠体制についた。爆睡をしていた友人が途中で起きて、背もたれにしていた窓の外を左肩で振り返ってチラ見して私たちが降りるバス停がまだだと確信し、もう一度眠りについた。私にはどこからどう見ても同じモノクロの針葉樹の景色に見えたけど、いつか私も違いが分かるようになるのかもしれないと思った。
ストックホルム在住のYoko Andersson Yamanoが綴る、「少し夢心地だけど、ちゃんと現実」の思い出にまつわる話。
Written & Photographed by Yoko Andersson Yamano / Craft-based glass-artist, Tableware designer